瓦は安全。地震にも風にも強い。

防災構造

表面から見ると普通の瓦でも、裏側には瓦同士が噛み合う防災構造があります。これが台風による瓦の飛散や、地震による瓦のズレを防止しています。

隠された瓦の秘密“防災構造”

現在使用されている粘土瓦は、8割以上が防災瓦。上の写真のように、瓦と瓦が噛み合うのが防災瓦です。
強風による浮き上がりや地震によるズレを防ぎます。粘土瓦は台風にも地震にも強い、安全な屋根を作っています。

50年に一度の強風に耐える

屋根が受ける大きな外力は、おもに地震と風。とくに風の力は、かなり大きな地震力をも上回る脅威です。
最新のガイドライン工法では、建築基準法に沿って、50年に一度の強風にも耐えられるよう設計されています。
一方で地震力は、屋根の棟部に大きく作用します。

そこでガイドラインでは、棟部に1Gの地震力に耐える強さをもたせています。
これは阪神・淡路大震災クラスの地面の揺れに匹敵する揺れの強さです。

1枚で250kg

粘土瓦は防火性にも優れます。近隣の火災で火の粉が飛んできても、瓦は決して燃えません。
粘土瓦は“不燃材”です。またJIS規格による瓦の強度は1500N(約150kg)。
しかし実際の製品は250~300kgの曲げ破壊荷重を実現しています。

「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」では瓦屋根の耐風・耐震性能の測定方法を標準化。
新製品や新工法も、常に耐風・耐震性能が検証されています。

下表はJIS(A5208)に定められている粘土瓦の品質です。現在生産されている粘土瓦は、この基準を大きく上回る品質をもっています。

下表はJIS(A5208)に定められている粘土瓦の品質です。現在生産されている粘土瓦は、この基準を大きく上回る品質をもっています。

JISの定める瓦の品質

曲げ破壊荷重 桟瓦で1500N
吸水率 釉薬瓦で12%以下
寸法 基準寸法から許容差4mm
凍害 凍結融解でひび割れや剥離がない
ここがポイント!
  • 瓦の防災構造が耐風・耐震性能を発揮。
  • 「ガイドライン」で安全性を検証。
  • 強度、吸水率などJISを上回る品質。

瓦は快適。夏は涼しく、冬は暖かく。

瓦自体の断熱性+瓦葺き工法の通気性

夏、直射日光にさらされる屋根はとても高温になります。
外気温が35℃のとき、屋根材の表面は60~70℃になり、その熱が小屋裏に伝わります。
断熱材が不十分だと2階の部屋がエアコンが効かないほどの暑さになってしまいます。

瓦は7~8℃も温度を下げる

金属や化粧スレートなど他の屋根材と比べ、粘土瓦は素材自体、工法自体の断熱性が高いのが特徴です。
小屋裏(天井から上)の温度上昇を抑え、それだけで7~8℃も小屋裏の温度が低くなります。
夏場に2階が暑くてたまらない場合、金属や化粧スレートの屋根を粘土瓦に葺き替えるだけで、「涼しくなった」と実感できます。

冬は暖かい粘土瓦

逆に冬場、瓦は暖房の替わりにもなります。
日中に瓦に蓄えられた熱が日没後の温度低下を緩やかにしてくれます。
瓦屋根は「夏涼しくて、冬暖かい」屋根材といわれます。
瓦屋根は冷暖房の負荷軽減にもつながるエコな屋根材です。

空気層は結露の防止に

瓦裏面の空間は、断熱効果の他にも大きな役割を果たします。
そこから水分を放出し、建物を傷める大きな原因「結露」を防止しています。

過剰な湿気は木材を腐らせてしまいます。
とくに木造建物では適切な湿気コントロールが必要になります。
湿気は雨だけではありません。
日常生活において常に発生し、温度とともに屋根のほうに上がります。

瓦屋根の場合、野地板と瓦の間の空気層が通路となり、瓦のすき間から湿気を逃しているのです。
瓦屋根には長い間の知識と経験が凝縮されています。

「すがもれ」

冬、雪が積もった屋根の中で水が凍ってしまうことを「すがもれ」といいます。

いわば氷のダムが屋根の中に出来てしまい、溢れた水が建物内へ入ってきます。
瓦屋根なら、瓦の下に入った水を外に出す工法がありますが、金属屋根などの「すがもれ」は大変。
どこにダムが出来ているかも分かりにくく、野地腐食の原因となってしまいます。

瓦屋根は「水分」をコントロールしやすい工法なのです。

ここがポイント!
  • 瓦屋根は夏涼しくて冬暖かい
  • 夏場は小屋裏温度が7~8℃も低下
  • 瓦の湿気調節機能で家が長持ち

住むなら、丈夫な家がいい。

瓦屋根の家は、丈夫な家

住むなら、丈夫な家がいい。地震にも台風にも安心な家がいい。柱は太い方がいいし、壁だって多い方が安心。

重くても軽くても耐震性は同じ

建物は重さに応じて設計されています。

建築基準法では、「重い建物」も「軽い建物」も、それぞれの重さに応じて設計されるので、完成した家の耐震性は同じになります。

丈夫な家は余力がある

では、どちらの建物が「丈夫な家」でしょうか。答は明らか、「重い建物」です。
「重い建物」には柱や筋交い、壁が多く、地震の揺れに対して“余力”があるからです。

実証された瓦の家の耐震性

では、「重い建物」とはどんな家でしょうか。それは瓦屋根の家。
「丈夫な家」=「重い屋根の家」=「瓦屋根の家」なのです。

実はこれは、建築基準法による分類です。
「重い建物」「軽い建物」は屋根材によって判断されるので、重い屋根材をつかった建物は、その分しっかりと設計されるわけです。

しかも、部屋の間取りを決める自由度は、それほど変わりません。

軽い建物は安い分…

「軽い建物」は、確かに作りやすいし、建築費も多少は安く済みます。
しかしそれは、壁や柱を省略するのと同じこと。あなたはそういう家に住みたいですか?

下の写真は、東日本大震災の揺れに耐えた瓦屋根の家。津波でも壊滅的な被害を逃れています。
東日本大震災では瓦屋根の多くの家が地震に耐え、瓦屋根の建物の耐震性が実証されました。

東日本大震災の津波で壊滅的な被害を逃れた「重い建物」(瓦屋根の建物㊨)=2011年4月仙台

ここがポイント!
  • 瓦屋根の家は、丈夫な家
  • 「丈夫な家」には“余力”がある
  • しかも間取りはあんまり変わらない

震度7にも、耐える瓦の家。

高速道路が崩れても、瓦屋根は残った

ビルが倒れ、高速道路も倒壊した阪神淡路大震災。
大きなマンションが崩壊しているすぐ側で、瓦屋根の家はほとんど被害を受けていません。

実験で証明された耐震性

これは特別な例ではありません。
現在の住宅建築は、大震災クラスの地震にも倒壊しないよう設計されているのです。
瓦屋根も同じ。建築研究所の指導のもと筑波の研究施設で行われた実験でも、2階建ての瓦屋根は震度7の地震にたいしてもビクともしませんでした。

東日本大震災にも、瓦屋根は耐えた

大きな爪跡を残した東日本大震災。
古い瓦屋根にも被害がありましたが、もちろんそれ以上に多くの瓦屋根が大震災に耐えました。
(画像)

軽い屋根も倒壊している

一方、大きな地震のたびに住宅被害は発生しています。それは瓦屋根の家だけでなく、金属など軽い屋根の建物でも同じ。
躯体の耐震性が不十分であれば、屋根の種類にかかわらず地震の被害は起きてしまいます。

肝心なのは屋根の重さではないのです。躯体が十分な耐震性をもっているか。地震への配慮はそれにつきると言えるでしょう。

金属の軽い屋根も倒壊

地震被害は瓦屋根の建物だけではない。
軽い屋根の建物でも、躯体の耐震性が不十分であれば、ぺちゃんこに潰れてしまう。

ここがポイント!
  • 瓦屋根は震度7にも、津波の衝撃にも耐える
  • 軽い屋根でも地震被害は起こる
  • 瓦屋根の耐震性は実験で証明済み

強さのヒミツは「ガイドライン工法」。

瓦屋根が耐風にも地震にも強いヒミツは「ガイドライン工法」

かつては粘土で葺き固めていた瓦を、ガイドライン工法では釘や銅線、金具類を使って躯体と緊結します。
このガイドラインは平成13年に業界の基準として策定されました。
確認されている耐震性能は、地震の影響を受けやすい「棟部」の場合で1G(980ガル)です。

上写真は東日本大震災の屋根被害です。
左側はガイドライン工法と思われる棟部。
強い地震力で変形してしまいましたが、崩れることはありませんでした。
右は古い建物の棟部です。土の固着力が失われています。

図は、左側がガイドライン工法の施工図の例です。
ガイドラインは試験方法を定めているので、その試験に合格した工法であれば所定の性能が満たされており、様々なガイドライン工法があります。
図右側の緊結材が入っていない工法の場合、早めの点検をおすすめします。

地震による建物倒壊の原因は?

専門家も「瓦は倒壊要因でない」

「木造建物のおもな倒壊要因は壁量不足。昭和56年の建築基準法改正以前の建物で多く見られます。
逆に、改正以降に建てられた建物では、屋根の重さにかかわらず被害はとても少ないのです。
こうした建物は耐震性能は劣化しますが、古い建物は瓦屋根の場合が多いので、建物の耐震性に比べて重量過大になってしまうケースもあります」。
つまり、古い基準で作られた建物は壁量が不足しており、経年により接合不良や白アリ被害も重なって耐震性が劣化します。
同時に古い建物ほど瓦屋根が多いので、瓦屋根の建物の被害が目立つ、という指摘です。

“町全滅”はテレビの中のこと

能登半島地震や中越沖地震など近年の大きな地震被害で、各自治体が行った住宅の被害率調査を見てみると、被害が最も多かった地域でも、「全壊」「半壊」を合わせた被害はほんの数パーセントです。
今回の東日本大震災でも、地震による「全壊」「半壊」は「地震の規模の割に少なかった」と日本建築学会が発表しています。

ここがポイント!
  • 実際の地震被害は一部の建物
  • 被災地の被害率は想像より低い
  • おもな倒壊原因、古い家の「壁量不足」